ヒトツマエ   ヒトツサキ



世界には悲しいことが溢れている
あなたの周りには悲しいことが多すぎる
だから私は強がらなくちゃいけない
私よりあなたの方が辛いはずだから
うんと強がらなくちゃいけない
私がいちばん悲しい人になるときまで

0716


追憶。

それは、誰(た)が為の涙ですか?

 ――あなたの為だと思いたい。

『存在を忘れないこと』

 ――それが私にできること。


受け止めていたようで そうでなかったのだろうか

 答えはYes.
 そしてNo.

 両方。


行き着けなかった答えを与えられたから
認めざるをえなくなった
再確認させられた

その答えはとても残酷でつらいこと

 ――認めるということ。


涙が、あふれた。
1130



毒と薬と毒と薬と。
近すぎる、毒になる。
遠すぎる、毒になる。
適度な距離、薬。

つまるところ、既に中毒。

覚醒しても終わらない、消えない、なくならない。
少しだけ、本物と呼べるだろうか。

いつか本物に成るだろうか。
それは、終わりであり始まり。
どこまでいっても薬であり、ふと毒にもなる。
そのどちらもを『当たり前』として。
本物として。

0517



所詮そこは箱の中。
そこにいるのは箱の中の人間。

どんなに俺が箱の外に招こうと
出てくるはずがない。

所詮俺は、箱の外の人間――


それでも願う。
いつかだれか ひとりでもいい、
箱の祖に踏み出してくれることを――

そして想う。
どこかにきっと ひとりくらいは
実は箱の外から訪れたものがいるはずだと――


同じ舞台。
けれどそこは、箱の

内(なか)と外。

1212



手を伸ばしてもいいですか?
その手を取ってくれますか?
その手をつないでくれますか?

ずっと一緒にいてくれますか?
いつか、飽きるくらい。

――死で別たれるまで。

1124



知ってる。
引き返せなくなるその場所を、
知ってる。
周りが見えなくなるくらい夢中になる位置を、

警鐘。

知ってる。
居心地の良いこの場所を、
知ってる。
だけどとても苦しいこの位置を、

警告。

知ってる。
流してしまえる感情を、
知ってる。
流しても関を越えても手にするのは後悔だけだと、

堂々巡りのメビウスの輪。

知ってる。
そのほどき方を、
知ってる。
なにもしないよりするほうがいいって、

願い。

そっちへ行きたい。
行ったまま、戻りたくない。

1011*



どっちを向いたらここから逃げられるだろう
誰に向かったら全てゆだねてすがれるんだろう

ここは二つの世界の狭間
現実と呼ばれる世界 表向きの世界
嘘と仮面と建前で飾られた 生きる世界
その中からどれだけの幸せを選び取る?
その結果どれだけの重荷を背負う?

どれを選んだら幸せになれるんだろう
誰を選んだら自分がここにいられるんだろう

そこは夢に描いた世界の端っこ
ここには存在しない世界 絵空事の世界
思考と指先と媒体で生み出す 妄想の世界
その中にどれだけの想いを詰め込んだ?
その結果いったい何を得たの?

どうしたら想いを告げられるんだろう
誰に想いを吐いたら受け止めてくれるんだろう

どうしてなんてどうして悩むんだろう
どうしてなんて答えはもう出ているはずだろう

なぜならそいつは夢物語の絵空事
現実と呼ばれるここには「ない」んだ「できない」んだ
告げられる想いは限られていて
受け入れられる想いも当然限られていて

だからこわくて逃げたいんだ 甘えたいんだ
だけど幸せになりたいんだ あなたと一緒に
捨て去る夢をも選びたいんだ 欲張りだから
選んだ夢を認めて欲しいんだ あなたが好きだから

0624




お前がそこに描(えが)いた夢を
俺がここで形にしてやるよ
お前がそこにためこんだ夢を
俺がここに解き放ってやるよ

記憶という名の曖昧な媒体
名前をつけて順番に整理して来たつもりでも
いつかかすれて消えていく
なくなってしまわないように何度も確認しなくちゃいけない

だからさあ おしゃべりなその脳味噌で語ってくれよ
そしたらさ おしゃべりなこの指先で語ってやるよ
お前がそこに描いた夢を
俺もいっしょに描いた夢を
お前が語った夢を
俺もいっしょに語りたい夢を

そして記憶という名の曖昧な媒体をもう一度空っぽにしてやるんだ
でなきゃもう 新しい夢も詰め込めないよ

0529



あんたは確かにそこに居て だけどあたしのとなりには居ない
なんでだろう、なんて そんな言葉にはキリがない

あんたの居る未来(いま)を想像してみる
背はこのくらいだろうか?
まだ手をつないだりしているだろうか?
仲がいいだろうか?
ケンカしてるだろうか?

だけど 現在(いま)ここに あたしのとなりにあんたは居ない

あんたの居ない未来(いま)を想像してみる
きっと知らない気持ちがある
気がつかない想いがある
持つことの出来なかった感情がある

それはなんて悲しいことなんだろう…

だから あんたの居なかった未来(いま)はありえない

あんたは確かにそこに居た 生きていた
あたし達はそれを知ってる
他の誰が知らなくても 忘れてても
あたし達はそれを知っている 忘れない

そう ここは、『あんたの居た未来(いま)』だ。

0429

ヒトツマエ   ヒトツサキ













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