音姫 -風姫・水姫-
     〜オトヒメ -カザヒメ・ミズキ- 〜

 ――その山には、音姫が棲んでいる。
 昔々からの言い伝えです。
 音姫は、子猫ほどの大きさの、二人の女の子だと言う話です。運が良ければまれにその姿を見ることが出来ますが、いつもは、声しか聞こえません。
 風に乗って聞こえてくるのは風姫の声、水の中から聞こえてくるのが水姫の声、と言われています。
 迷えるものには優しく、悪しきものには猛々たけだけしく聞こえてくると言われています。

 では、どんなときに音姫の声が聞けるのでしょう?
 それは、失せものが見つかったときです。
 音姫は、山で迷子になった子どもの元へと、大人達を導いてくれます。
 なくしてしまった母の形見の場所を教えてくれます。
 忘れてしまった約束の言葉を思い出させてくれます。

 音姫の声が聞こえたときには、失せものが見つかったときには、音姫をまつやしろに、きちんとお礼に行きましょう。
 でなければ、音姫は機嫌を損ねて嵐を呼びます。
 大風が吹いたり、大水が出たり、それはそれは大変なことになります。
 音姫への礼を欠かなければ、音姫はいつでも、人々を助けてくれるのです。















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