シルベ温泉のおはなし
    〜 しるべ おんせん の おはなし 〜

 むかしむかし、南の森にひとりの狩人の男が住んでいました。
 けれど男は、わなを作るのもしかけるのも、鉄砲をうつのも下手で、狩人としての生計は全く成り立っていませんでした。

 そんなあるひ、鳥のむれをみつけた男は、うんと慎重に狙いをつけて、ばーん、と鉄砲をうちました。すると、むれの中の一羽にかすったのです!
 なんたる奇跡!
 男は、その鳥が落ちたと思われるほうにずんずか森を進んでゆきました。 そして、乳白色の泉と、そこに鉄砲のたまがかすったのであろう鳥がいるのをみつけることができました。
「ようし!」
 男は鳥をつかまえようとしましたが、
「おまえって、狩人に向いてねぇなー。こいつを分けてやるから商売でもしてみろよ」
 鳥は男にそう言うと、ひらりと羽を広げて飛んでゆきました。
「ま、まて!?」
 男は、元気に飛び去ってゆく鳥を、しばらくぼうっと眺めていました。
 それからどのくらいたったでしょう。男は泉から湯気が出ていることに気が付きました。
「こ、これは……!」

 そう。その泉は、温泉だったのです。
 鳥は男に、温泉でひともうけしてみろと言ったのでした。


 ――これが、シルベ温泉のはじまりのおはなしです。














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