閉界-ヘキ 〜 へいかい ヘキ 〜

 突然世界が繋がって迷い込んでしまう閉鎖空間、異世界に似た『閉界』のひとつ、ヘキ。

 辺りは一面薄暗く、しかし鮮やかな赤と緑に包まれたその世界のほとんどは、水。
 底なしの水面を漂う、葉のような、木の皮のような、薄い不安定な足場だけが、このヘキを移動できる場所である。頑張れば歩くこともできるが、走らななければ移動は困難である。
 だからといって留まっていては帰ることは出来ない。
 そう、出口を見つけられれば、辿り着けさえすれば容易に元の場所に帰れるのだから。

 この閉界=『ヘキ』の出口は、水面を渡った先の、水の斜面の一番上。

 しかし、出口の存在を言葉にしてはいけない。向かっている事を気取られてもいけない。
 水面下には女の生霊みたいなものがおり、ヘキを出ようとしている事が知られると、水の中に引きずり込まれて二度と帰れなくなってしまうからだ。



 もしも土で出来た、固い地面に辿り着いてしまったら、そこは世界空間の端っこです。
 そこでは、真っ赤な鳥居と、心を病んだおんなのこに会うことでしょう。
 それはこのヘキの主ですから、元の場所に帰りたかったら、決してこわい思いをさせないように……。














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