言遷し 〜ことうつし〜

 人々は、小さな黄色い石を見つけると、"言籠ことごめ"をします。言籠とは、『願い事』や約束をこめて、森に向かってほおることです。
 それにはこんなわけがあるのです――。


 森の中には小人のスィナフが棲んでいます。
 そして、森の中に咲く白い花、シララバは、彼らが育てているのです。
 なぜかって?
 スィナフは、シララバの花のみつを使って魔法を使うからです。

 人間や、他の色んな動物達、草花達の『願い事』が込められた石を見つけてきては、シララバのみつのなかに、ぽとんと落とします。
 そして、石に込められた『願い事』を溶かし出し、『願い事』の溶けたみつを固めて、甘い石を作ります。
 甘い石は、『願い事』が叶えられるべきところへと、時に時間をかけて、時に誰かの手を介して、導かれるように移動していきます。そして、辿り着いた先で『願い事』を叶えてくれるのです。

 『願い事』を叶え終わった甘い石は、ただの石ころになります。
 そこにいつかまた、誰かが何かの『願い事』を込めると、 スィナフはそれを見つけてくれます。
 そして、甘い石をまた作るのです。


 人々は、小さな黄色い石を見つけると、『願い事』や約束をこめて、森に向かって放ります。
 それは、小人のスィナフに『願い事』や約束を叶えてほしいからなのです。










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